ASD自体は「病気」というより本人の「特性」であるため,薬で治療することは難しい側面があります。
実際にADHDと違って症状を改善させる有効な薬物療法も今のところ存在しません。
ただし、大人のASDの方は、ADHD、うつ病、不安障害などを合併し、症状を複雑化・重症化し社会生活に多大な支障を生じていることも多く、これらの合併症に対する適切な薬物療法は有用です。
ASDの方に提案できる治療法は環境調整やカウンセリングがメインとなります。
環境調整とは、ASDの方と周囲の人が、自閉スペクトラムの症状や特性をよく理解したうえで、生活面において工夫をおこない、本人が過ごしやすい環境を整えることです。
主治医による診療や臨床心理士との心理カウンセリングをもとに、家族や職場の人達にも協力してもらうことが必要となります。
当院では、病気の理解と対処スキルの向上のために、個別心理カウンセリングは重要な治療法と位置づけています。
また、集団による気づきやコミュニケーションスキルの習得を目的とした集団療法も重要な治療機会と捉え、「大人の発達障害のための集団認知行動療法」(G-CBT)や休職中の方にはリワークプログラム(復職支援プログラム)を提供しております。
自閉スペクトラム症(ASD)は治らないので治療方法はないと諦めずに、主治医・臨床心理士らと信頼関係を築きながら一つ一つ困難を克服することにより、生きづらさの改善と自己効力感の回復に繋げていきましょう。