躁うつ病は正式には「双極性障害」とも呼ばれ、躁状態(活動が増えて気分が高揚する状態)とうつ状態(気分が落ち込み活動が減少する状態)を交互に繰り返す病気です。
人は誰しも楽しいことがあった時にウキウキしたり、嫌なことがあった時に落ち込んだりするもので、それは自然なことです。
しかしながら、双極性障害では、その名称の通り感情の変動が極端で、その結果として家族や周りの人が困るほど社会的な信用を失う可能性があります。
その名称から、うつ病の一種と誤解されがちで症状も似通った部分がありますが、実際には異なる病気で治療も異なるため、はじめにしっかりと診察を受けることが重要です。
では躁状態とうつ状態とは具体的にどのようなものなのでしょうか?
■躁状態
躁状態とは、病的に気分が高揚し、活動性が増加している状態です。
周囲から見ると一見元気そうに見えますが、これらの症状が度を越した状態が続き、日常生活を妨げ、本人にとってマイナスとなる結果を引き起こします。
ただし、本人は調子がいいと感じていることが多く、病気であるという認識が生まれにくいため、時に診断が遅れてしまうことがあります。
■うつ状態
逆にうつ状態とは、病的に気分が沈み、活動性が低下している状態です。
これらの症状はうつ病と似ているため、時に鑑別に苦慮する場合があります。
また躁うつ病では躁状態に比べてうつ状態の期間の方がかなり長いことが知られており、当初うつ病の診断をされたものの、治療の経過で躁状態のエピソードが出現しはじめて躁うつ病の診断がつく場合もあります。
原因は遺伝要因と性格要因があることが知られています。
遺伝要因としては、親が双極性障害である場合、子供の発症率が高くなる(およそ5〜10%) ことが知られています。
また性格的要因としては、明るく開放的で社交的な人、逆に言えば断ることがあまり出来ない人(いわゆる循環気質)に多いと言われいます。
もちろん、こういった傾向に当てはまらなくても環境要因(養育環境、社会的なストレスなど)を引き金に発症することもあるため注意が必要です。
うつ状態であれば誰しも不調と感じますが、躁状態を自分で判断することは困難で、時には「最近調子がいいな」とさえ思ってしまう場合もあります。
また躁うつ病の多くはうつ状態の期間が圧倒的に長く、はじめにうつ病と診断され、治療経過中に躁状態が出現しはじめて躁うつ病の診断がつくことも多いです。
また若年者でうつ病と診断された方の半数近くは実際には躁うつ病であるとの報告もあり、治療中も常に躁うつ病の可能性を頭の片隅にいれておく必要があります。
ここでは国際的な診断基準(DSM-5)をご紹介します。
双極性障害(躁うつ病)はI型とII型の2種類に分類されます。
I型は明確な躁状態(躁病エピソード)が現れる一方、II型では躁状態が軽く(軽躁病エピソード)、うつ状態が主になります。
■双極性障害Ⅰ型:躁病エピソード+抑うつエピソード
■双極性障害Ⅱ型:軽躁病エピソード+抑うつエピソード
●躁病エピソード
A:異常かつ持続的に気分が高揚し、開放的または易怒的になる。
さらに異常に亢進した活力・活動がある。このような期間が少なくとも1週間、ほぼ毎日続く。
B:以下のうち少なくとも3つ(気分が易怒性のみでは4つ)を認める。
C:社会的・職業的機能に著しい障害を引き起こしている
D:薬物によるものではない
●軽躁エピソード
A:異常かつ持続的に気分が高揚し、開放的または易怒的になる。
さらに異常に亢進した活力・活動がある。このような期間が少なくとも4日間、ほぼ毎日続く。
B:以下のうち少なくとも3つ(気分が易怒性のみでは4つ)を認める。
●抑うつエピソード
A:以下の症状のうち5つが2週間の間に認められ、そのうち少なくとも一つは①か② 。
B:苦痛が明らかか、社会的・職業的な機能障害を認める。
C:物質によるものではなく、その他の病気によるものでもない。
双極性障害は躁状態とうつ状態を交互に繰り返し、気分の乱高下によりひどく疲弊する病気です。
治療の軸になるのは薬物療法ですが、補助的に精神療法(認知行動療法など)を併用することもあります
■薬物療法
躁状態、うつ状態、そして状態がやや落ち着いた維持期、それぞれに合わせて使っていきます。
躁状態、うつ状態には、気分の波を抑えることを目的として、おもに気分安定薬(リーマス、デパケンなど)や抗精神病薬(セロクエル、ジプレキサ、エビリファイなど)を用います。
またうつ状態の場合にはうつ病に用いるような抗うつ薬を用いる場合もありますが、あまり効果がなかったり、一気に躁状態に転じてしまったり(躁転化)、うつ状態と躁状態を短い期間で繰り返すようになる(急速交代=ラピッドサイクラー)場合もあり、慎重に使用する必要があります。
■精神療法(認知行動療法)
躁うつ病は再発することが多く、病気を根治するというより気分の波の落ち着いた維持期を長くすることが重要です。
薬物療法のみならず、認知行動療法のような精神療法で、自分のものの捉え方や行動を見つめ直し、柔軟なものに変容させておくことが、再発予防の観点からも重要です。
また薬物療法と併用することでより高い効果が期待でき、再発の予防にもなります。
双極性障害は気分の乱高下により、本人自身もひどく疲弊してしまうことが多く、長い経過の中で様々な精神疾患を合併してしまうことがあります。
具体的には不安障害、摂食障害(拒食症・過食症)、アルコール依存症、境界性パーソナリティ障害などがあり、特に不安障害の頻度が高いことが知られています。
合併が疑われる場合は、同時にそれらの治療も並行して行っていく必要があります。
有病率はおよそ0.5%といわれています。
1,000人に5人弱ということで、これは100人に10人弱といわれるうつ病に比べると頻度は少ないといえます。
しかし、うつ病と診断されたうちの何割かは躁うつ病の可能性があるとする報告もあり、実際にはもう少し多い可能性があります。
〒450-0002
名古屋市中村区名駅4-1-3
クリスタルMAビル4階・6階
052-587-5666
休診日:水曜、祝日
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
9:00~13:00 | ○ | ○ | ー | ○ | ○ | ■ | ー |
15:00~19:00 | ○ | ○ | ー | ○ | ○ | ■ | ー |